「SFFコラム」では、小型PCビルドに役立つ様々な知識・テクニックをお伝えしていきます。初めてMini-ITXケースで自作PCに挑戦する方の不安を少しでも減らせるようお手伝いします。
〝物理的な〟相性問題
小型ケースで自作PCを組む際、最もぶつかりやすい壁が〝物理的な〟相性問題。たとえば、
- グラボがケースに入り切らない……。
- CPUクーラーが大きすぎて蓋が閉まらない……。
- CPUクーラーがメモリと干渉する……。
- スペースに余裕がなくケーブル類を取り回せない……。
- ケーブルがファンと干渉する……。
スペックシートを読めば回避可能な初歩的なものから、実際に組み込んでみないと気付けないものまで、小型PCビルドにおける物理的相性問題は多々あるのですが、
今回は主に初めてMini-ITXなど小型ファクターでの自作PCにチャレンジする方向けに、物理的干渉を避けるための基本的な4か条をお伝えします。
筆者の経験で言うと9割くらいの物理的干渉は本記事の内容で避けられますが、中にはケースやパーツ特有の干渉もあるので、100%は保証できません。あらかじめご了承ください。
4か条
その1:ケースの仕様をよく読む
何を当たり前なことを、と思われる方もいるかもしれませんが、冗談抜きでこれが一番大事です。
余程無理しなければ大体のパーツが収められるミドルタワー以上のケースと異なり、Mini-ITXのみに対応するような小型PCケースはハイエンドの大型パーツを搭載できない場合があります。そのため、搭載を検討しているパーツがケースに本当に入るのか、購入前によく確認しましょう。
少なくとも以下の項目は十分に理解しておく必要があります。
- 搭載可能なグラフィックボードの寸法(長さ、高さ、厚さ、スロット数)
- 搭載可能なCPUクーラーの高さ
- (水冷クーラーを搭載する予定なら)搭載可能な水冷ラジエーターの寸法
- (ストレージを増設する予定なら)ドライブベイの個数
- 電源ユニットの規格(SFX/SFX-L/ATX)
ケースファンを増設する予定なら、上記に加え搭載可能なファンの寸法、個数も確認しておきましょう。
仮に失敗しても外せば良いだけなので上記に比べればダメージは少ないですが、せっかく買ったケースファンが勿体ないです。
その2:排他仕様に注意する
小型PCケースでは狭いケース内空間を効率よく利用する必要がある都合上、排他仕様となっている場合が多々あります。
要するに「何かを搭載したら何かが搭載できない」、トレードオフとなっている箇所があるということです。
これは具体的なケースを挙げたほうが分かりやすいかと思いますので、筆者が愛用しているケース「Fractal Design Ridge」を例に説明します。
このケースは排他となっている仕様が非常に多く、今回の説明にうってつけです。
「互換性」の項目に次のように記載があります。
対応マザーボード
Mini ITX
電源種類
SFX, SFX-L
側面ラジエーター
≤175mm長のGPUを設置した場合に120 mm(GPUがない場合は280 mm)
PSU最大長
SFX-L
GPU最大長
325 mm(SSDをインストールした場合) 335 mm(SSDをインストールしない場合)
GPUの最大高
125 mm(上面ファンをインストールした場合) 137 mm(上面ファンをインストールしない場合)
GPUの最大厚み
57 mm(2x 140 mmファンをインストールした場合) 82 mm(側面にファンをインストールしない場合)
CPUクーラーの最大高
70 mm
上から順に見ていきます。
まず側面ラジエーターとある部分。このケースはケース側面に唯一のラジエーター取付け箇所があるのですが、そのラジエーターに制限があります。
- 175mm以下の長さのグラフィックボードを搭載している場合に、120mmのラジエーターを取り付け可能
- グラフィックボードを搭載しない場合に、280mmのラジエーターを取り付け可能
もうこの時点でかなり厳しい制約があるというのが分かってくると思います。
ゲーミング用途でPCを自作する場合はほぼ確実にグラボを搭載するかと思いますが、その場合は120mmの水冷ラジエーターしか付きません。さらにグラボの長さも175mmと、シングルファンモデルしか載りません。
なので、このケースでミドルレンジ以上のクラスのグラボを搭載しようと考える場合、必然的に空冷クーラーを採用することになります。
GPU最大長の部分は2.5インチドライブベイにSATAのSSDを接続する場合の話。ドライブベイを使おうとするとグラボの長さ上限が10mm短くなります。これはドライブベイを使わずストレージをM.2 SSDに統一すれば回避可能。
GPUの最大高についてはケース上面に80mmファンを取り付ける場合の話。取り付けなければ気にすることはありません。
地味に厄介なのがGPUの最大厚みの部分。140mmファンを取り付ける場合は57mmまでの制限が掛かります。
これもファンを取り付けなければ82mmまで余裕が出るのですが、このケース、実は140mmファン×2基が標準で装備されています。
標準で装備されているということは、装備されている前提でケースのエアフローが設計されているということでしょうから、これを外した場合は排熱に影響が出る可能性があります。
排熱を鑑みてグラボの厚さを抑えるのか、爆熱覚悟で突っ込むのかはかなりの悩みどころです。
そしてCPUクーラーの最大高。最大70mm。
先ほど説明した通りこのケースはミドルレンジ以上の性能を目指す場合に水冷が搭載できないので、空冷で高さ70mm以内のものを選定する必要があります。
サイドフローの空冷はまず付かないので、トップフローのものから選ぶことになります。冷却性能が限定的になることから、クーラーだけでなくCPUの選定から大事になってきます。
……といった具合に、各パーツの搭載に条件が付いているというのは小型ケースあるあるです。ご自身の用途に応じて取捨選択を行ってください。このケースだと大きく分けて以下の3パターンでの構成になるのではないかと思います。
- 175mm以下のグラボ+120mm簡易水冷+冷やしきれるCPU(例:GeForce RTX 4060 + Core i5-14600K)
- 335mm以内のグラボ+高さ70mm以内のトップフロー空冷+低TDPのCPU(例:GeForce RTX 4070 SUPER + Ryzen 7 9700X)
- 280mm簡易水冷+APU(例:Ryzen 7 8700G)
その3:トップフロー空冷を採用する場合はヒートシンク付きメモリを避ける

小型PCでは何かと出番の多いトップフロー型の空冷CPUクーラーですが、採用する場合は大型のヒートシンクが付いたメモリを選ばない方が無難です。
CPUクーラーの側面が干渉したり、クーラーを固定する際にヒートシンク同士が激突したり……基本良いことないです。
そもそもトップフロー型空冷を選んでいる時点でメモリの冷却に関してはそれほど心配する必要がありません(上から風を吹き付ける構造なので、CPUと一緒にメモリも多少冷却される)。メモリはヒートシンク無しか、付いていても薄型のものから選びましょう。
その4:寸法ギリギリを攻めすぎない
長さ335mmまでのグラボが入るケースがあったとしましょう。
では、そのケースに334mmのグラボを載せても大丈夫か?
……結論から言えば「載るには載るがリスクが高い」です。
これはケースメーカーがどこまで想定しているか次第ではあるのですが、筆者の過去の経験から言うと、数mmしか余裕がない状況は結構危ういです。
配線を通すスペースがなくなったり、電源コネクタの向きやケーブルの固さによっては物理的に電源コネクタを挿せない等、何かしら起こるリスクが大きくなります。
もちろんエアフロー的にも好ましくありません。
寸法の余裕はあればあるほど物理的干渉の可能性は下がりますし、組み込みの作業も楽になります。
可能であれば20mm、最低でも10mm程度余裕を持たせておくと安全かと思います。
おまけ:問題が発生したらマニュアルをよく読む
買ったPCパーツがケースに取り付けられないという状況は、実際に出くわすと非常に動揺します。
焦ってしまう気持ちは筆者も経験ありますのでとても分かるのですが、そういう時こそ一度深呼吸してケースの組み立てマニュアルを見直してみてください。
小型ケースは狭い空間に多くのパーツを効率よく詰め込むため、一般的なケースと異なり複雑な構造をしていることが多いです。パーツの取付順からコネクタ類を挿す順番まで細かく指定がある場合があります。
問題が発生した時は一度落ち着いてマニュアルを読みましょう。
まとめ
小さな筐体に部品を詰め込む小型PCの自作では、大型ケースでのビルドに比べて物理的干渉が発生しやすいです。
本記事を参考に物理的相性問題の発生しにくいパーツ選びに役立てていただければと思います。
お読みいただきありがとうございました。